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公同書簡・ヘブル書

2014年1月23日 2013年度 某神学校新約神学レポート

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○公同書簡(Ⅰ、Ⅱペトロ書、ユダ書、ヤコブ書、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲヨハネ書)
・特定の個人や教会へ当てた手紙という体裁をとりながらも、信徒一般に読まれることを目的とした一般的内容の手紙。(原口p154)
・それぞれの地域で苦難の中にいる共同体に対し、キリストの苦しみを自らの苦しみとし、苦難を背負う群として生きるようにと励ましている手紙。(山口p165)パウロ的な手紙とは違う福音理解。教会の多様性を示す。(山口p167)
・パウロ書簡、偽パウロ書簡と違い、受信者は漠然としている。著者には使徒の名が使われている。(川村輝典 荒井他p402)「公同」には「一般的」という意味と「正典的」という意味がある。(川村 荒井他p403)

Ⅰペトロ書
1、内容
・迫害の中でも信仰を捨てず、キリストが歩んだ道をたどることを勧める「勧告的書簡」(原口p155)手紙の形式であるが、内容は勧告の言葉。(川村 荒井他p414)
2、神学的特色
・選びと召命、贖罪論と義認論、試練と従順、キリストは魂の牧者であり、監督者であること、家庭訓(2:18~3:7)(原口p156~157)
・異教世界で受ける迫害を避けるために、ギリシアローマ世界の慣習に従うよう勧めている。(山口p166)
・賛歌の形でキリスト論が述べられている。十字架の苦しみはキリスト者にとっての模範であること、キリストが私の代りに苦しんでくださっているのだから、信じる者はキリストの苦しみを自らの苦しみとして負うべきことについて書かれている。(川村 荒井他p420)
3、著者、年代、場所、読者
ペトロの名による手紙だが、流麗なギリシア語、ヘレニズム的用語で書かれていること、広い範囲での迫害があった1世紀末以降の状況を反映していること、(原口p155)パウロ神学の影響があること、地上のイエスを知らないこと(川村 荒井他p418)からペトロが著者であるとは考えられない。
・執筆年代はドミニアス帝の時代(90年代半ば)(原口p155、川村p418)、小アジアで書かれたと推測。読者は異邦人の改宗者(Ⅰペト1:14~15、18等)(原口p155)
・バビロン(5:13)はローマのことを指しているから、ペテロが殉教したローマで書かれた。(川村p418)受信者はキリスト者一般。範囲は多くのローマ領。(川村 荒井他p416)

Ⅱペトロ書
1、内容 異端的教師たちに警戒することを勧める「勧告的書簡」(原口 p155)
2、神学的特色
①徳(1:3)、知識(1:5、6:3)、自制(1:6)、敬神(1:3,6)といったヘレニズム的な用語を用いている。(原口p156)
②新約時代の文書が正典として読まれている痕跡がある。(p156)
③終末の遅延の問題をとりあげる。(3:1~13)(原口p156、川村 荒井他p424)
3、著者、年代、場所、読者
Ⅰペトロ書同様の理由に加え、ユダ書が下敷きとなっていることからペトロが著者であることは否定される。著者は2世紀小アジアの都市の教会指導者。受信人はキリスト者一般(1:1)(原口p158)第1の手紙とは別の著者(川村 荒井他p422)ユダの手紙以降の執筆。オリゲネスによる引用(3世紀)以前。110年~150年あたり。執筆場所は不明。ローマから小アジアのキリスト者宛て。(川村 荒井他p425)

ユダ書
1、内容 異端的教師への警戒を勧める「勧告的書簡」(原口p161)異端に対する激しい反論の書(川村 荒井他p442)
2、神学的特色
①正典がどの範囲かまだ定まっていない。エチオピアのエノク書からの引用がある。(原口p162)
②異端的教師の出現を言及する。巡回伝道者でイエスのメシア性を否定する要素がある。グノーシス主義者であるとはいいきれない。(原口p162)反道徳的な自由主義的グノーシスに対する反論。主自身が戦うのであるから信者もそれに戦い、再臨を待ち望むべきである。(川村 荒井他p444)
③黙視文学との関連がある。Ⅱペトロとの関連の関連の指摘。(川村 荒井他p443)
3、著者、年代、場所、読者
執筆者はイエスの兄弟ユダ(1節、マルコ6:3)となっているが、初代教会で権威ある者の名前を借りた偽書。本当の著者は2世紀にアジアで活動したキリスト教指導者。手紙の宛先も2世紀の教会の一般の信徒にむけられている。時期は2世紀前半(110~130年頃)(原口p161)150年以前。執筆場所は不明。(川村 荒井他p446)

Ⅳ Ⅰヨハネ書
1、内容 ヨハネ共同体の信徒にむけて書かれた勧告的書簡(原口p166)教会の分裂という危機の中で書かれた手紙。(中村和夫 荒井他p425)
2、神学的特色 ヨハネ福音書と密接な関係にある。ヨハネ福音書との違いは執筆者の意図の違い。(中村p431)真の信仰者は神の霊を注がれているので真理を知っている。神の愛に生き、愛をしっている。真の信徒にはキリストが人となったこと、イエスがメシアであることを公にする責任がある。教会を出て行った者にはグノーシス的傾向があり、これらを否定する。(原口p167)共同体の中に、「キリスト」と「人間イエス」を区別せず、「キリスト」が十字架で刑死したことを否定する者が現れた。その者たちは教会から出て行った、とする(2:19)(山口p161)思想的背景にグノーシスの影響、特に仮現論者の影響がある。(中村 荒井他p430)
3、著者、年代、場所、読者
3つのヨハネ書簡の著者が同一であるとは言い切れない。執筆場所はシリア。100年前後の事情を含む。(原口p166)キリスト者たちがユダヤ教の会堂から「追放」されていった状況の中、1世紀の終り頃、ヨハネ福音書が生まれた同じ流れの共同体にむけて執筆された。(山口p160)ヨハネ福音書の著者と同一らしい。別人だとしたら近い立場の弟子。執筆場所はグノーシスの教師がいたということを根拠にシリア・小アジアの広域。(中村 荒井他p434~436)

Ⅴ Ⅱヨハネ書
1、内容 伝道者の受け入れの問題を取りあげる「勧告的書簡」(原口p165)
2、神学的特色 キリストの受肉とメシア性を告白することの重要性を説く。異端的傾向を保つ宣教者を受け容れないように勧める。(原口p167)旅する伝道者を「もてなす」ことにたいして、「愛の実践」のことが問題視されていた。(山口p161)グノーシスの影響。Ⅰヨハネ書と並行関係。しかし、Ⅰヨハネのような二元論的対比は文面に出てこない。(中村 荒井他p438)
3、著者、年代、場所、読者
発信人は長老。受信人のキュリア(女主人)は「教会」の人格化。「子どもたち」は信徒(原口p167、中村 荒井他p436)3つのヨハネ書簡の著者が同一であるとは言い切れない。特にⅡヨハネはⅢヨハネの形式を借りた偽書。執筆場所はシリア。100年前後の事情を含む。(原口p166)キリスト者たちがユダヤ教の会堂から「追放」されていった状況の中、1世紀の終り頃、ヨハネ福音書が生まれた同じ流れの共同体にむけて執筆された。(山口p160)
Ⅰヨハネ書の著者と同一。執筆時期は紀元1世紀の終りごろ。エフェソ周辺が有力だがヨハネ共同体は広域に存在したため、特定できない。(中村p438)

Ⅵ Ⅲヨハネ書
1、内容 「友好的書簡」「勧告的書簡」(原口p165)個人の手紙であったが公同書簡に入れられた。(中村 荒井他p439)
2、神学的特色 長老のガイオに対する宣教者受け入れの感謝。受け入れなかった教会の指導者への非難。ここに教理上の争いがあったかどうか不明。(原口p167)
グノーシスの教師は本文には出てこない。分裂の原因は不明だがデオテレペスとガイアの指導権対立がある。(中村 荒井他p441)
3、著者、年代、場所、読者
書簡の発信人は長老、受信人はガイオ(家の教会の指導者?)(原口p165)
3つのヨハネ書簡の著者が同一であるとは言い切れない。執筆場所はシリア。100年前後の事情を含む。(原口p166)キリスト者たちがユダヤ教の会堂から「追放」されていった状況の中、1世紀の終り頃、ヨハネ福音書が生まれた同じ流れの共同体にむけて執筆された。(山口p160)Ⅰ、Ⅱヨハネ書と同一の著者による。いつどこでということは特定できないが、Ⅱヨハネ書と同じ場所で同じ頃、1世紀終りごろ書かれた。(中村 荒井他p442)

Ⅶ ヤコブ書
1内容 行ないを強調する倫理的、勧告的書簡(原口p169)手紙として伝えられているが、内容的には道徳的な勧告。(川村p404)
2、神学的特色
①行ないの重要性を強調する。マタイ福音書の思想と並行する。律法と福音は連続している。「信仰による義」(ロマ3:21~31等)を説くパウロ主義を否定。(原口p170)
パウロの信仰擬認が、実際には社会的弱者に対する愛の実践を失わせているということに対する批判が示されている。(山口p167)
パウロ主義を否定しているように見えるが、ロマ書3:28が言おうとしているのはヤコブ書が問題にしているところとは違う。ヤコブ書はここから生じる間違ったパウロ主義を批判している。(川村 荒井他p441)
②アブラハム解釈・・・イサク奉献の記事(創22:1~9)を行為義認の模範とする(2:21~24)。(原口p170)行ないと結びついた信仰のみが人を救う。(川村 荒井他p411)
③富者批判・・・当初貧しかった教会が時代が移るにつれて富を持つ者が増えていったことが背景(原口p170)社会主義、階級批判ではなく、あくまで「福音の立場」から論じている。(川村 荒井他p412)
3、著者、年代、場所、読者
・「主の兄弟ヤコブ」から「離散している(ディアスポラ)十二部族」へという体裁。異邦人の中で生活するキリスト教徒をさす。(原口p169)異教世界にすむユダヤ人キリスト者、もしくはすべてのキリスト者。(川村 荒井他p408)
・真の著者はヘレニズムユダヤ教が背景のユダヤ人教会の指導者(3:1教師)。(原口p170)
・執筆時期は一世紀末から2世紀初頭。(原口p170、川村 荒井他p413)
・執筆場所についてはパレスティナかシリア。(川村 荒井他p414)

○ヘブライ書
1、内容 パラレーシス(勧告、慰め、励まし:初期ユダヤ教とキリスト教の説教の形式)(原口p173)大祭司キリスト論を展開している点で神学的論文的ではあるが、全体を俯瞰すると説教集。(川村 荒井他p386)外的迫害と内的信仰の緩みという問題を持つ信徒たちを励ますこと。(原口p173)教会を励まし、信仰を活性化させること。(山口p164)
2、神学的特色 
・キリスト論
①神の子キリスト論
冒頭で神の御子キリストが、創造の仲介者であり、神の言葉の啓示者であるとする(1:1~4)神の子は天使に優り(1:5~2:18)、天使とは異なり地上の生活を送り受難を経験したのは、罪の贖いのためであった(2:10~18、4:14~16)。(原口p174)
②大祭司キリスト論
キリストは、モーセに優る大祭司(3:1~6)であり、メルキゼデクのような大祭司(5:6等)(原口p174)祭儀を終わらせた「大祭司キリスト」という信仰告白を生み出した。(山口p164)大祭司キリスト論はヘブライ書独特のもの。(川村 荒井他p305)
③「仲介者」キリスト
罪の赦しの別の解釈を示し、十字架につけられ天にあげられたイエスが、永遠の聖所に至る道をひらいた(9:15以下)(山口p164)
・救済論
ヘブライ書のキリスト論は救済論と結びついている。十字架と復活の言及はないがそれが前提とされている。救済論の基礎は大祭司キリスト論。(川村 荒井他p395・396)
・終末論
信者を励ますための終末の救いの到来を強調。未来を待ち望む黙示文学的な終末論であると同時に、現在を強調するヘレニズム的終末論を含んでいる。(川村 荒井他p398)
3、著者、年代、場所、読者
ヘレニズムユダヤ教を継承するキリスト者。聖書引用は七十人訳だが、ユダヤ人か異邦人かは判断がつかない。迫害を前提にしていること、Ⅰクレメンス書との並行があることから執筆年代は90年代中盤。執筆場所はアレクサンドリア。(原口p173)著者について、パウロ説、アポロ説、バルナバ説がある。アポロ学的な学識とパウロ的な信仰を持った教師。(川村 荒井他p394)執筆場所はエフェソあたりが最も可能性があるが、決定は困難。(川村 荒井他p398)80年から90年(川村 荒井他p399)宛先はローマ。異邦人を含む混合教会に宛てられた。(川村 荒井他p302)


参考文献
荒井献他『総説 新約聖書』日本基督教団出版局、1981年
原口尚彰『新約聖書概説』教文館、
山口雅弘『よくわかる新約聖書の歴史』日本基督教団出版局、2007年


 


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