解放劇第6作
天の国はここに 〜パン種教会の物語〜
Version3.2
2005年8月21日(日)日本キリスト教団草津教会上演
2003年8月28日(日)日本キリスト教団兵庫教区クリスチャンセンター上演
企画・提供:日本基督教団部落解放センター
製作:角樋 平一
ストーリー原案:小糸 健介&富田 正樹&角樋 平一
脚本・監督:富田 正樹
主題曲 作詞:笠置 隆司 作曲:川上 盾
上演時間:60分間 (台本は保存また印刷して、ゆっくりお読みください)
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1幕もののため、暗転はありません。シーンナンバー(#)は便宜上のものです。
(音楽1:オープニング・テーマ)
舞台中央の机に、卓上ランプが点灯している。
そこに教育主事の浜野しほりが下手から登場。聖書と何冊かの本と紙を持ってきて、何やら書いたり、考え事を始める。しかし、気に入らないのか、何度も紙をクシャクシャ丸めては床に投げ捨てる。
(音楽1:ボリューム下げる)
明転。
下手から、講壇用の大型聖書を持って、牧師の別府渉が入ってくる。
別府 「あれ、ひょっとして徹夜明け?」
浜野 「ううー、そうですぅ、別府先生、ファファ……」 と、背伸びして大あくび。
別府 「あーあ、こんなに紙くずを……こりゃ、紙に対する冒涜だな……」、
別府、紙くずを拾い、それから聖書をセットしたり、礼拝の支度を始める。
別府 「それで、どう。だいぶ出来上がったの? 劇の台本」
浜野 「秋祭りって、11月27日と28日の土日ですよねぇ」
別府 「そうだよ」 と、パイプ椅子を並べ始める。
浜野 「間に合うのかなァ、ハァ……」 と天を仰いでため息。
別府 「3作目ともなるとプレッシャーでしょう」
浜野 「(不機嫌)いいえ」
別府 「秋祭りに教会を地域の人に解放する。しかも聖書劇を上演する。もうだいぶ定着してきたみたいだね。今年も楽しみにしてる人がいるらしいよ」
浜野 「お客さん入ってるの見たことないですけど」
別府 「でも、わかりやすくて、しかも部落のことと関連付けてるからいいって言う人もいるんだよ。浜野先生でないとできないわざだね」
浜野 「そんなことないです。誰でもやればできます」 とゴシゴシ消しゴムをこする。
別府、手を止め、浜野を一瞥して、首をすくめる。
上手から調子よく西川一樹が登場。
一樹 「おはようっすぅ! おぅ、しほり、台本できたか?」
浜野 「かずき。あんたに『しほり』と呼ばれるほど、あたしら仲良かったっけ?」
一樹 「ほんじゃ、なんて呼んだらええんよ?」
浜野 「浜野先生と呼びなさい」
一樹 「……(一瞬絶句)あほちゃうか、おまえが先生いうガラか」
浜野 「(逆上)があー! もうウルサイ! あっちいけ! 仕事のジャマジャマ!」
別府 「一樹くん、おはよう」
一樹 「(声色を変えて)西川先生と呼びなさい」
別府 「え?」
一樹 「(しほりにも)西川一樹先生と呼びなさい」
浜野 「いいから、あっちいけって言ってんの! なんでこんな早く教会に来てんのよ、珍しく。礼拝まだでしょうが」
別府 「いや、もうすぐだよ」
浜野 「へ? いま、何時ですか?」
別府 「10時20分」
浜野 「(腕時計を見つめ、息を呑む)やべぇ! 時計停まってる?!」
と、あわてて下手へ走り去る。
一樹 「(口をゆがめ、おどけて)しっかりしろよぉ、しほりぃ」
上手から教会員たちが集まり始める。最初に山田道子、続いて綿貫依子、浅居剛。
最後にひっそりと背の高いサングラスの男が入ってくる。 (音楽1:F.O.)
山田 「おはようございます」
別府 「おはようございます。今日は司会、よろしくお願いいたします」
綿貫 「おはようございます」
別府 「おはようございます。綿貫さん、その後、膝の具合はいかがですか?」
綿貫 「ありがとうございます。おかげさまで、だいぶよくなりました。先生のお祈りのおかげですね。本当にありがとうございます」
別府 「そうですか、それは感謝ですね」
浅居 「別府先生、おはようございます!」
別府 「ああ、浅居さん。今日は礼拝後、秋祭りの実行委員会よろしくお願いします」
浅居 「はい、わかりました! しかし、なんですな。毎年思うんですけど、キリスト教の教会で、『秋祭り』ってのはええんですかいなぁ」
別府 「(にこやかに)いいんですよ。本質は同じ収穫感謝なんですから。昔からこの教会が解放運動の拠点になってきた経緯もあって、お祭りの日程を教会に合わせてくださるようになったわけですし。こういう教会は全国でも珍しいんじゃないでしょうか」
浅居 「でも、呼び方は『秋祭り』なんやね、やっぱり」
別府 「そうです。そこは譲り合いです。みんながクリスチャンなわけではないですから」
浅居 「ふむ、もうちっと伝道意欲に燃えとった時代もあったんやけどね」
別府 「……(苦笑)」
(音楽2:礼拝開始のチャイムが鳴る)
浅居 「お、礼拝や」
別府 「ええ」
浅居 「あれ、浜野先生は?」
浜野 「すいませんっ!」 とあわてて下手から走りこんできて、席につく。
別府と浅居も、別れてそれぞれの席につく。司会の山田、講壇に立つ。
そのまま全員静止……。ゆっくりと暗転……照明30%に減光。
(音楽3:オルガンの後奏、F.I.)
(音楽3:オルガンの後奏、F.O.)
ゆっくりと明転。
……と同時に静止状態から、再び教会員たち動き出す。
山田 「それでは、報告に移ります。まず、本日初めてこの教会にいらっしゃった方をご紹介いたします。えぇっと……あ、あれ?」
男、速やかに立ち上がり、静かに一礼して上手に出て行ってしまう。
一同、誰かと見回すが、すでに男は立ち去ったあと。
山田 「出て行かれましたね……。仕方がない。えー、それでは、この後、秋祭りの聖書劇練習を短く、そのあと、秋祭り実行委員会。本日の昼食は、綿貫さんが献品してくださった松茸を使って、松茸ご飯です。綿貫さん、どうもありがとうございます。(綿貫、立っておじぎ)あとはよろしいですか? ではこれで礼拝を終わります」
教会員たち、立ち上がる。
浅居 「あの人、どっかで見たことあるような気がするなぁ。誰やったかなぁ……」
浜野、進み出る。
浜野 「えーと、それじゃ、聖書劇の第一回練習をしますから、関係者の人はこちらに集まってください」
綿貫 「浜野先生、本当に申し訳ないけど、今日あたし、これからどうしても会社に出なくちゃいけないから。ごめんなさいね」
浜野 「わかりました。ご苦労さまです」
綿貫 「みなさん、劇、がんばってくださいね。それから一樹、あなた、ちゃんと先生の言うこと聞いて、失礼のないようにしないとだめよ」
一樹 「へーいへい」
綿貫 「それと、あなた今日、晩ごはんどうするの?」
一樹 「いや、別に考えてないけど」
綿貫 「もしよかったら、うちに食べに来なさい」
浅居 「綿貫さん、あんまりこいつを甘やかさん方がええよ。ほら見てみ、この顔、完全にクセになっとる」
綿貫 「そうかしらねぇ。まぁあたしのところも子どもがいないものだから、つい、ね。じゃ、みなさん、すみませんけど、失礼します」
浅居 「社長さんは、さすがに忙しいねぇ。日曜も仕事か」
別府、教会員たち、礼拝の片づけを終え、浜野の周りに集まってくる。
浅居 「ほんで、しほりちゃん、台本はもうできたんか?」
別府 「夕べは徹夜だったんでしょう? どこまでできたの」
浜野 「うーん……テーマはねぇ」
浅居 「ふむ、テーマは?」
浜野 「できました」 (音楽4:「パン種のテーマ」F.I.)
浅居 「な……テーマしかできとらんのか」
一樹 「それってヤヴァイんじゃないの?」
別府 「どんなテーマ?」
浜野 「ううう……パ、ン、種……?」
全員 「パン種?」
別府 「パン種が、どうなるの?」
浜野 「パン種って、あまりいい意味で使われてた言葉じゃないんですよね。なんて言うか、はっきり言って差別用語ですよね?」
別府 「差別用語であると断定はできないけれど、人を排除するときの言葉だとは言えるかも知れないね。たとえば――」
浜野 「たとえば、(一樹を指差して)『このパン種を取り除け!』とか――」
一樹 「なによ、それ。オレを排除したいわけ?」
浜野 「だから、差別用語。あと『ファリサイ派のパン種』に気をつけなさい、とか」
浅居 「でも、あの『天の国はパン種にたとえられる』のパン種やろ? ええ意味やと思うてた」
別府 「いや、むしろ、ちょっと変わった人を排除するときの、決まり文句だったんじゃないかと言われてて、逆にそれをイエスが逆手にとって、むしろパン種のようなものだ――」
浅居 「――天国は」
別府 「そうです」
浅居 「なるほどぉ……。で? どうするの?」
浜野 「イエスが出てきて、(一樹を指して)『このパン種のような人が、天の国の』……、なんかヤだな」 と顔をしかめる。
一樹 「どういう意味やねん」
浅居 「とにかく、要するにほとんど何も決まってないということやね」
浜野 「ごめんなさい!」 と頭を下げる。
別府 「いつごろ台本ができそうですか?」
浜野 「今からでも急いで書きますから!」
別府 「来週から、書きあがったところだけでも練習をしてゆきましょう」
浅居 「了解、了解、ほな今日の練習は解散やね」
浜野 「すみません」
別府 「それじゃ、実行委員会は、昼食後、午後1時からということで」
浅居 「ハイ、わかりました。さーて、今日は松茸ご飯。マッタケ、マッタケ、と」
人びとはそれぞれ散る。 (音楽4:「パン種のテーマ」F.O.)
浅居、行きかけるが、ふと一樹がにらんでいるのに気づく。
浅居 「ん? なんや、おまえ、どうしたんや、松茸ご飯食べに行こうや」
一樹 「いらん」
浅居 「いらん? なんでや」
一樹 「なーにが、パン種じゃ、アホくさい!」
浅居 「パン種? ああー、あの話か。浜野さんもうまいこと言うよなぁ、そう言われてみれば、確かにおまえはこの教会ではパン種かも知れんなぁ」
一樹 「なんで」
浅居 「え? そりゃまぁ、ちょっとした変わりもんやからなぁ」
一樹 「どこが」
浅居 「どこがって、おまえ、そら、いろいろあるがな」
一樹 「いろいろってなによ」
浅居 「突っかかんなよ。何をムキになっとんや」
一樹 「オレはわかってんねんぞ。みんなが何となく、オレをうっとおしがってるのをな。なんかこう、イジメくさーい雰囲気が――」 浅居がさえぎる。
浅居 「あほか。イジメなんかあるかい、この教会で。冗談で、からこうて言うてただけやないか」
一樹 「そうか、冗談か」
浅居 「そうそう、冗談、冗談」
一樹 「そうかぁ、冗談なんや、ハハハハ……言うて納得するほどオレがアホや思てんのか? ほんなら、なんでオレがパン種なんか、どこがどう変わりもんなんか、きちんと説明してみいや!」 (音楽5:「口論」スタート)
浅居 「そんな大した意味はない。おまえがひがんどるだけや。ちょっと個性が強いからなぁとか、その程度のことやないか」
一樹 「その程度のことやない! ホンマはみんなオレみたいなのがおらんほうが――」
浅居 「なんでそういう卑屈な物の考え方しか――」
一樹 「どこが卑屈やねん! 『このパン種取り除け!』て指さされて誰がうれしいねん!」
浅居 「そやから大した意味はないっちゅうて――」
一樹 「なにが『イジメなんかあるかい、この教会に』やねん! なんぼ差別の問題に長年取り組んできた教会や言うても、個人的にはいやな思いさせてるやんけ! 何が部落解放や。あんたがやってることが差別じゃ」
浅居 「(ぐっとつまり)……言いやがったなぁ……! そこまで言うんやったら、わしもはっきり言わしてもらうけどなぁ。おまえのせいで、みんなが今まで長年積み上げてきた努力が、土足で踏みにじられてるんやぞ!」
一樹 「どういう意味で」
浅居 「学校出ても、ろくに定職にもつかんと、ムラの中の安アパートに住んで、毎日フラフラ街に出ては遊びほうけてばっかり、女の子連れこんで泊まらして、その子がうちに帰ったら、自分が泊まったとこが部落やった、と親から聞かされてびっくりや。おまえはムラの面汚し、『部落のイメージを引き下げてる』て言うてる人もおる」
一樹 「大きなお世話じゃ」
浅居 「そら、ムラの人間やからって、特別扱いされるのはおかしい。そやけど、実際には『あそこは部落やから』とか、『あいつは部落出身やから』とか、そういうことを言われんように、みんながんばってきたんや。人から後ろ指さされへんように、気遣うて生きてきたんや、それをおまえ――」
一樹 「知らんて、そんなことは。別に部落の出身やから言うてそんなことは気にはせえへん。他の誰でもやってるようなことをやってるだけやんけ」
浅居 「へえええー、誰でもやってることか?! おまえが先月連れ込んだ女の子、妊娠さして、堕ろすや堕ろさんや、大騒ぎしとったらしいやんけ」
一樹 「なんでそんな話を知ってんねん!」
浅居 「おまけにその堕胎費用まで、綿貫のおばはんに泣きついて払ってもろたそうやないか」
一樹 「だからなんであんたがそんな話まで知ってんねん!!」
浅居 「狭い世間やねん。そんなことムラのみんなが知っとる。おかげでムラの一部では教会は笑いもんや。おまえは部落の面汚しやというだけやない。クリスチャンの、教会の面汚しなんや!」 (音楽5:「口論」エンド)
一樹 「……そやから、オレはここのそういう狭苦しいところがイヤなんや! そんなんあんたと関係ないやないか! ムラの人らにも関係ないし、教会にも関係ないわ。オレはオレやないか! ……そうか、なるほど、そういうことか。わかった、確かにオレはこの教会のパン種や。出て行ったらええんやな。わかった」 と出てゆこうとする。
浅居 「一樹……!」 と止めようとする。
と、突然、一樹のポケットの携帯電話が鳴り始め、立ち止まってイライラとした調子で携帯電話を開いて耳に当てる一樹。
一樹 「はい……(驚く)げ、なんやねん、おまえか」
去っていた教会員たちが戻ってきて、会議をはじめようと、机を出したり、コップを並べたりし始める。浅居も仕方なく、手伝い始める。
浅居 「あーあ、こいつのせいで昼飯も食えんかった。ひええー。マッタケ、うまかったか? ん?」 と泣きそうな顔で教会員たちに聴いてまわる。
一樹 「……何が立ち入った話やねん。はっきり言えよ……」
教会員たち、ほぼ席について、一樹を見ながら電話が終わるのを待っている。浜野だけは何枚もの紙をめくったり書いたり、台本をいっしょうけんめい考えている。
一樹 「……なんやてぇ?!」 と、舞台前に進み出る。
一樹 「……またかよ。……え? いやや。……あかん。……あかんって。ほんまに」
一樹、教会員たちを気にしはじめる。
一樹 「無理やって! ほんま勘弁してくれ! ……え? はあっ?! そんなカネがあるわけないやないか!」
カネ、と聞いてぎょっとする教会員たち。
浅居 「(立ち上がり)カネ?! 一樹、おまえまた女の子を……!」
一樹 「……そうや」
浅居 「そうや、やて?!」
一樹 「……ことわる。はいはい、じゃーな、バイバイ」
電話を切る。白い目で見ている教会員たち。
浅居 「一樹! こんどは誰や!」
一樹 「(うんざり)オヤジ」
浅居 「オヤジ? オヤジさんがにん……、いやいや、おまえのオヤジさん、お金に困ってんのか?」
一樹、手を振って無視。会議の席に座る。
別府 「(一樹に)いいんですか?」
一樹 「ええ、結構です」
浅居 「一樹……」
別府 「(一同に)それでは、秋祭りの実行委員会を始めます。まず、最初に、ムラの自治会のほうの実行委員会に出席していただいた浅居さんに、本部のほうの会議の報告をしていただこうと思いますが――」
再び一樹の携帯が鳴る。あわてて携帯を手に取り、立ち上がって下手のほうに寄る。
一樹 「なんなんや。しつこいなぁ。さっきあかんって……、えっ?! なんやて? 家、取られた?」
再びぎょっと顔を見合わせる教会員たち。
一樹 「ほ、ほんで、オヤジ、今どこにおんねん! え? なに?! ……教会の前?!」
ぎょっと一樹が上手を振り向くと、ほどなく父親の西川一敏が入ってくる。
一敏 「おう、一樹」 (音楽6:「父と子」スタート)
一樹 「ど、ど、ど、ど、どういうことやねん」
一敏 「いま、金貸しが見積もりに来とる。あんなボロボロの家でも、無いよりましらしい。あんな家、売れるんかどうかわからんけど。家の中にも、金目のもんなんか無いしなぁ。そやけど、持っていけるもんは持っていくらしい」
一樹 「それで……どうなるんや」
一敏 「それで足りん部分が、まだ借金として残る」
一樹 「違う。家がなくなったら、オヤジはどうなるんや」
一敏 「……どうなる、て。おまえ、泊めてくれへんのか」
一樹 「あほぬかせ。誰がオヤジなんかうちに入れるか」
一敏 「ちょっと、しばらくの間、隠れたいだけやねんけどな」
浅居 「一樹、お父ちゃん泊めてやれや。いっつも女の子泊めてるやないか」
一樹 「女の子はええ。オヤジはあかん」
一敏 「何でもするから。洗濯でも、掃除でも、飯炊きでも、なんでもするから」
一樹 「ウソは聞きたくない」
一敏 「ウソやない」
一樹 「オヤジは嘘つきやから」
一敏 「嘘つき? わしが何をウソついた言うねん」
一樹 「ウソばっかりついてきたやないか。『商売はうまくいっとる』、『借金は減ってきた』、『もうちょっとしたら楽になるから』、『もうちょっとしたら家に金入れるから』言うて、おかんのこと騙してきたやないか!」
一敏 「一樹……」
一樹 「そうやってウソ八百並べておいて、それで言うんや。『そやけど、今日とりあえず20万いるんや。これで今週乗り切ったら、月末には金が入る予定やから、それで返すわ』……それでおかんに金返したことあるか?」
一敏 「返さんかったことなんか、あるかいな」
一樹 「返したことがない! しまいには、おかんから借りるだけやのうて、おかんの方の実家の貯金まで手ぇ出したないか」
一敏 「あれは返す。必ず返す」
一樹 「おかんが家出て行ったら、しまいには、息子のオレのところにまで、せびりに来やがって」
一敏 「おまえからは借りたことはない」
一樹 「オレが貸さへんからやないか。……オレは絶対に貸さへん。そんなドブに捨てるような金があるか」
浅居 「けっ、どっちみちおまえも金持ってないやないか」
一樹 「うるさい。とにかく、オレは何べんも自己破産せぇ言うたんやし、息子の忠告受け入れへんで、ここまで来てしもたオヤジが悪い」
間……。
一敏 「自己破産は……できひん……」
一樹 「なんで」
一敏 「オレひとり破産にはできひん。みんな、商売仲間が保証人でつながっとるから……。オレがコケると、みんながコケる。そんなことしたら、おまえ……命、取られるで……。借金があるうちは生かしといてくれるけど、取るもん取れへんようなったら、あとは……」
間。 (音楽6:エンド)
一樹 「じゃ、どうすんねん……」
一敏 「そやから、ちょっとの間だけおまえの家にかくまってくれ」
一樹 「いやや」
浅居 「一樹!! おまえ、実の父親がこんなに困ってんのに! それでも息子か!」
一樹 「あんたには関係ない! こいつの息子やから、こうなったんじゃ!」
浅居 「なんちゅうこと言うねん、おまえ」
一樹 「……出て行ってくれへんか? 教会の人らに恥ずかしいし。出て行ってくれ」
一敏、一瞬黙り込んだあと……、
一敏 「教会……? 教会言うたら、困った人助けてくれるとことちゃうんかい。おまえらは、こんなこぎれいな所で歌なんか歌うて、お茶なんか飲んで、ええのう。わしら毎日地を這うような生活や。働いて働いて、ほんで野垂れ死にや。死んだら化けて出たるわ、ここの教会に! ケッ!!」
そして、上手に出て行ってしまう。
浅居 「おい一樹、追っかけへんのんか」
一樹、去ってゆく父親に背を向けて、無視。
浅居 「一樹、おまえ、ほんまにオヤジさん死んだらどうすんねん?!」
一樹 「死なへんって、あいつは」
一同、しばし沈黙……。一樹もうつむいたまま。そして、やっと別府が口を開く。
別府 「どう、しましょうか……」
一同、反応が無い。
別府 「このまま、会議を続ける雰囲気でもないような……」
一樹 「続けてください」
一同(口々に) 「ちょっと待って」「だってねぇ」「そんなの無理ですよ」「どうするの」
浅居 「一樹、あのままで、わしら平気な顔で祭の話なんかできひんで」
一樹 「じゃあ、どうするんですか? 秋祭りの実行委員会をやめて、うちのオヤジの生活保護委員会でもやってくれるんですか?」
再びため息と沈黙……。
山田、おそるおそる顔をあげ、周囲をうかがうように、そして勇気をふりしぼって発言。
山田 「ねぇ、みなさん、祈りましょう。一樹くんとお父さんのために、祈りましょう」
別府 「ああ、そ、そうですね……」
山田 「じゃあ、牧師先生、お祈りお願いします」 と顔を伏せて、目を閉じてしまう。
別府 「え? わたしですか?! はい、あの……ううむ……では、い、祈り、ます」
別府が苦しげに頭を垂れ、山田と浅居も、他の教会員も目を伏せる。
一樹、冷ややかに見たまま。浜野が目を上げると、一樹と目が合い、目をそらす。
別府 「ああ、うう……天の父なる御神さま……なんと祈ったらいいか、わからない。神さま、どうか西川一樹くんのお父さんの無事を、お守りください。そして、どうか、お父さんの借金が、なんとかなりますように、あなたが逃れる術を与えてください。この祈りを、主イエス・キリストの御名によっておささげします。アーメン……。(目をあけて、ため息)ハア、これでいいのかなぁ」
山田 「さぁ、会議を始めましょう」
浜野 「いいんですか、ほんとに?! 教会員の家族が家を失おうとしてるんですよ。ほったらかしといて、いいんですか?!」
山田 「……でも、ご本人が助けようと言う気がないのに」
一樹 「いいんです。ほっといてください。ぼくがいることで、教会が迷惑でしたら、いい機会ですから、ぼくはこれで消えさせてもらいます。さいなら」 去りかける。
浜野 「ちょっと待ってよ」
一樹 「なんで? どうせオレはパン種なんやろ?」
浜野 「本気で言ったんやないって、冗談なんやから」
一樹 「ええんやって。冗談でもじゅうぶん傷ついた。(自分を指差し)『このパン種を取り除け!』 フン、じゃあな」 と行こうとする。
……と、上手からダークスーツ姿の男が現れる。金融業者の取立て人栗岡皓司である。
栗岡 「こんにちは。お邪魔いたします」 (音楽7:「栗岡のテーマ」スタート)
一同、来客を見上げる。栗岡は折り目ただしい態度で進み出る。
別府 「あ、はい」 と立って、栗岡に近づいてゆく。
栗岡 「ああ、どうも、初めまして。いま、ちょっとよろしいでしょうか?」
別府 「どういった御用でしょう?」
栗岡 「こちらに、西川一樹さんとおっしゃる方はいらっしゃいますでしょうか?」
別府 「え? あ、あの、失礼ですが、どちら様でしょうか?」
浜野 「さ!! それじゃあ劇の練習を始めましょうかぁ!」 と立ち上がる。
「そこ、浅居さんと、えーと君! 鈴木くん! その机動かして〜!」
一樹 「鈴木?!」
浅居 「鈴木! いいから、そっち持て! ほら早く!」
全員で、長テーブルや椅子を舞台後方にかたづけ、舞台上にスペースを作り始める。
別府 「(ふと我に返る)あ、それで、えーと、どちら様でしょうか」
栗岡 「ああ、これは失礼、申し遅れました。わたくし、KK金融保証株式会社、代表取締役の栗岡皓司と申します」
山田 「(ぎょっとして)金融? ひょっとして、借金取りの人?!」
浜野 「はいはいはい、山田さんこれ運んで〜」 と山田にポットを持たせる。
別府 「金融関係の方が、どうしてこの教会に?」
栗岡 「西川一樹さんという方が、こちらの教会におられるとお聞きしたものですから」
別府 「さ、さあ、そういう名前の人が、この教会に来られたことはないと思いますが」
栗岡 「そうですか。では、もし訪ねてこられるようなことがあればで結構なんですが、その方に伝えていただけますか。お父さんが行方不明になられたので、ぜひご連絡をいただきたいと。あ、連絡先はこれです。(胸ポケットから一片の紙を取り出す)これ、私の連絡先ね」
別府 「はあ」
栗岡 「その方のお父さんに対して、私ども債権を持っておるのですが、もしお父さんが行方不明のまま、あるいは亡くなられたなどということになりますと、債務は息子さんに移ります。いわゆる『負の相続』というやつですね。ふつうの親御さんは、お金を残す『プラスの相続』ですが、この場合は借金なので、いわば、フフフ、『マイナスの相続』というわけです」
栗岡が話している間に、全員の動きが止まってゆき、聞き入ってしまう。
栗岡 「おわかりですか? 息子さんに借金を返してもらわなくてはならない。気の毒なことです。若いのに、これからは返済、返済、また返済……死ぬまでただ返済に追われるだけの人生が待っている。ハア」 と、わざとらしいため息。教会員一同も、ため息。
別府 「……」
栗岡 「あ、どうも無関係の方々にいろいろとしゃべりすぎてしまったようだ。それでは」
一樹 「ちょっと、あんた!」 と進み出ようとするが、浜野と浅居が押しとどめる。
去りかけた栗岡が、一瞬立ち止まる。
栗岡 「あなた、牧師さんですよね」
別府 「あ、はい」
栗岡 「あなたがいちばん最初に『知らない』と答えず、私の名前を聞いたときから、ここに西川一樹さんがおられることはわかっていました。では」
思わず額に手を当ててうなだれる別府。上手に立ち去ろうとする栗岡、しかし、また立ち止まって、ふりかえり……。
栗岡 「ああ、また、来ます」
目をむき、顔を見合わせる教会員たち。栗岡、去る。 (音楽7:エンド)
一樹、がくっと床にへたり込み、泣き言を繰り始める。
一樹 「な……なんでやねん、それぇ……。なんでオレがオヤジの借金払って人生終わらなあかんねん。そんなアホな話あるかぁ……トホホホホ……」
山田 「こんなことでは、議事の進行ができませんねぇ」
別府 「そういう問題じゃないでしょう!」 と珍しく怒る。
浅居 「どうしたらええんやろなぁ……」
沈黙。一樹がベソをかく声だけ聞こえる。やがて、別府が動き始める。後方に片付けた椅子を前に持ってくる。
別府 「とにかく、座りましょう」 と他の人をうながす。
他の教会員たちも、おずおずと椅子を持ってきて、やがて、へたり込んだ一樹を囲んで、全員が半円形になって座る。
別府 「考えましょう……。どうすればいいのか」
浅居 「こら一樹、しっかりせい」
首を振ってうなだれたままの一樹。
別府 「とにかく、一樹くんまで当事者になってしまった」
一樹 「くそーっ!! さっきオヤジをとっつかまえて、あの借金取りに突き出してやったらよかったー!!」 と床を殴って悔しがる。
一樹のうなり声。それがやがて収まり、そしてまた沈黙が訪れる。
浜野 「……教会に……お金ありますか?」
浅居 「な、何を考えてるんや?」
浜野 「みんなで助け合うんです」
浅居 「ちょ、ちょっと、そんなこと言うたかて、なんぼ借金あるんかわからんねんで、こいつのオヤジさん。教会にお金なんかあらへんよ、人の借金を返してあげるような。ねえ先生」
別府 「お金はあるにはあるが、なけなしの――」 浅居、さえぎる。
浅居 「あきまへんで、先生。教会の貯金は新しい会堂の建築のために積み立ててあるもんでしょう」
浜野 「人のために教会があるのか、教会のために人があるのか――」 また、さえぎる。
浅居 「いや! いやいやいや、それはおかしい。募金をしてくださった人たちは、新会堂のために、と思ってささげているんだから、勝手に他の目的に使うのはおかしい」
浜野 「じゃあ一樹は? 見殺しなんですか?」
浅居 「誰もそこまで言うてないがな。おれかって一樹を助けたい。けど、筋は通さなあかん」
山田 「あのぅ、お言葉ですが、やはりここで教会が支出するのはおかしいと思います。わたしたちは教会を守らなくてはなりませんから。個人の訴えを聞くにも限度があるのではないでしょうか。」
一同、絶句してしまう。山田、話しているうちに、次第に興奮してゆく。
山田 「それに、この際ですから言わせていただきますが、我が教会の台所事情はたいへん苦しいのです。これまでの、この地域の解放運動への献金、教団の部落解放センターへの献金、各地の災害救援、戦争反対、その他さまざまな社会運動への献金、実にわたしたちはよく献金して来ました。その一方で、経常会計はここ10年余り赤字傾向で、すこしずつ別途会計を取り崩して埋めてきましたけれども、最近は不景気で……。(だんだん怒りがこみあげてくる)牧師先生の謝儀と伝道費だけは、死守しなければと思って会計を管理している者としては、もうこれ以上特別献金は増やせない。むしろカットしたい。そんな状況で、会堂建築基金のことを持ち出すなんて!(と別府をにらむ)いったい、誰のために努力してるんですか、わたしはっ!!」 最後は半狂乱。
別府 「申し訳ありません。どうか怒らないでください」
山田 「教会の台所事情は、寒いのですっ」
浅居 「あんたの言葉も寒いって――」
山田 「なんですって?!」
浅居 「いや、なんでもない、なんでもない。(と首を振るが、しかし)……ううーん、いや、しかし言いたいことはある――」
上手から綿貫が静かに中をうかがうように入ってくるが、教会員の誰も気づかない。
浅居 「――この教会はな……。昔からムラの中に立って、ムラの人といっしょに歩んできた教会や。結婚がうまくいかへんかった言うのがおったり、就職がうまくいかへんかった言うのがおったら、みんなで話し合って助け合うてた。だいたい、結婚がうまくいかんでも、就職がうまくいかんでも、当面困るのはお金のことや。そやから、昔は教会に出入りしとるもんで、少しずつ出し合って助け合うてたもんや。教会というのはそういうところやった。しかし……なんか今はそういう感じやなくなったな」
山田 「なにをするにしても、お金はかかるんです」
浅居 「そうや、そのとおりや。でも、昔は『何かをする』と決めたら、『そのために、どうやってお金を集めよう』って考えた。いまは反対や。『お金があればできるのに』、『お金がないから、赤字やから、やめよう』っていうことになる。なんか違ってきたんやな……」
山田 「じっさい不景気だということもあるかもしれないですけど、献金額も徐々に減ってきているんです。それに……こんなことは言いたくないですけど……」
別府 「どうぞ、かまいませんよ、言ってください」
山田 「いや、でも、言わないほうが……」
別府 「この際、なんでも話し合いましょう。遠慮せずに話してください」
山田 「……ここ5年ほど、この教会では、洗礼を受ける人が一人も出ませんでした。前の川上先生の時代には、年に2、3人は受洗者が出ていたのに。しかも、この近くに新しい住宅地もできて、周りの人口が増えてきているというのに」
別府 「(苦しげに)確かに、わたしがこの教会に来てからは、教会員は増えてはいないけれども……」
山田 「一樹さんも、教会に来てから長いけれど、いつになったら洗礼をお受けになるのですか? 聖餐式のパンだけは、むしゃむしゃ――」
一樹 「(さえぎって)別府先生が食べてもいいって言ったから食べてるんですっ! 誰でもみんなが招かれてるって……(浅居に)ほら見てみ、オレはやっぱり嫌がられてるやないか」
浅居 「しかし山田さん、こいつは洗礼受けても、献金はせんよ」 さらりと言う。
浜野 「献金のために洗礼者増やすわけちゃうでしょう?!」
浅居 「そりゃそうや。しかし、確かに昔はもうちょっと伝道熱心やった、うちの教会も」
山田 「そうです。もっと伝道熱心だったはずです。もっと祈りをささげて、もっと教会に人を呼んで」
浜野 「でも、そんな事やってる間に、また借金取りが来るやない、どうすんのよ」
山田 「別府先生は、誰でも招かれているとおっしゃって、一樹さんが聖餐に与ることも許しておられましたけれど、でも、こうして改めて考えてみたら、正確には、一樹さんはここの教会員ではないわけです」
浜野 「はぁ?!」
山田 「教会員でもない人に、教会の会計を用いだしたら、教会は跡形もなくなってしまいます」
浜野 「(激怒)じゃあ、あんた。一樹が洗礼受けてたら、教会の会計を動かすんか?!」
別府 「浜野先生、おさえて!」
浜野 「ほんなら一樹、今すぐ洗礼受けや! 教会員になったら、山田さんが助けてくれるって! 別府先生、一樹に洗礼さずけてください」
山田 「教育主事の先生が、そんな言い方をするなんて、私には信じられません」
浜野 「あんたが『一樹が教会員やないから助けられへん』言うたやんないか!」
山田 「そんなこと言ってません。私たちに何ができるなんて言ってません。私たちにできることは、祈ることだけです」
浜野 「祈りが何の役に立つんですかっ!!」
別府 「やめなさい!! ……浜野先生、言いすぎだよ。……祈りは必要だ」
浜野 「でも別府先生、こんなもんなんですか? 教会って、この程度のものなんですか?」
別府 「……」
浜野 「祈るだけで、いま目の前の人間を助けることもできない。わたしは情けないです」
間……。
沈黙を破って、一樹が声を発する。
一樹 「……ふん、この程度やって!! 教会なんて、こんなもんや! 人が大事か? 教会が大事か?(自虐的な笑い)教会が大事に決まってるやないか! 教会がつぶれたら、人を助けることもできひんもんな。そやから教会をつぶすような人間は出て行ってくれたほうがいい、と。 フン! というわけで、さっきから何度も言うてるように、オレは、出て行くわ」
別府 「あ、ちょっと待って」
浜野 「あたしも、この教会、辞めます」 と立ち上がる。
別府 「浜野先生」
一樹 「なんで、しほりまで辞めなあかんねん。自分は仕事やろ」
浜野 「教会員の人にあんな暴言吐いてもたし、あたしも混乱させてるみたいやし、あたしもパン種やなぁと思って」
浅居 「おいおい、どういうことやねん」
浜野 「パン種ってね、要するにイースト菌なんですよ。パン種はいつも、もうできあがってしもた今日のパン生地から引きちぎって、明日の新しいパンを膨らますために使うんです。あたしも、この出来上がってしもた古いパンを出て、新しい場所で新しい教会を膨らまします」
浅居 「なんでそないなイヤミなことを言うんや……」
一樹 「まぁ、好きにし。オレはどうでもええわ。ほなサイナラ」
と出て行きかけると、綿貫が進み出て、一樹の前に立ちふさがる。
綿貫 「出て行かないで」
一同、綿貫の姿に気づく。出て行きかけた一樹、また立ち止まる。
綿貫 「出て行ったらダメ」
別府 「綿貫さん、会社のほうは?」
綿貫 「早めに用事が済みましたから。さっきから聞いていると、ずいぶんと大変なことが起こっているんでしょうか?」
一同、別府と一樹をちらちらと交互に見る。
綿貫 「お金の問題ですか?」
別府 「まぁ……そうです」
綿貫 「一樹が教会を出て行かなければならないような事があるの? 一樹が借金でも作ったの?」
浜野 「一樹のお父さんが」
一樹 「黙ってろって!!」
綿貫 「教育主事の先生にそんな口の聞き方をするのはやめなさい!!」
一樹 「……」
綿貫 「一樹のお父さんが、借金をこしらえて、それで? 一樹、あなた保証人にでもなってたの?」
一樹 「まさか」
浅居 「逃げちゃったんですよ。それで、一樹のところに取立て屋がね」
山田 「教会に来たんです、取立て屋が。教会にまで取立て屋が来るんですよっ」
綿貫 「どうして一樹がお父さんの借金まで払わなくてはならないの?」
一樹 「だって、さっき借金取りが、オヤジが行方不明の場合は『負の相続』だって」
綿貫 「(首をふる)ウソよ。ただの脅しだわ」
一樹 「脅し?」
綿貫 「(うなずく)ヤミ金融のやり口よ。素人だからと思って、だまして払う必要もないお金をむしり取るのよ。もし、また来たら、お茶でも出して座ってもらって、その場で警察を呼べばいいのよ」
山田 「また来る、って言ってました」
浜野 「じゃあお茶でも出してあげたら」
綿貫 「行方不明になっただけでは『負の相続』は発生しない。亡くなったことが確認できてからよ。そして、本当に『負の相続』が発生しても、一樹、あなたが『相続放棄』すればそれで済むことなの」
一樹 「相続放棄?」
綿貫 「そう。あなたの場合は『マイナスの相続』で、何ももらうものが無い。むしろ取られるだけなんだから、放棄したほうがいいのよ」
一樹 「じゃあ、オレ、借金返済しなくてもいいの?」
綿貫 「そうよ」
一樹 「(急にニヤけはじめ、肩の力が抜けてゆく)な〜ぁんだ〜ぁ、ハッハッハッハッハッ。じゃあオレには関係ないんだぁ〜」
山田 「よかった。これで助かりましたね。感謝です」
浜野 「なに言うてんの。なんも解決してませんよ」
浅居 「そうや。オヤジさんの状況には変わりがない」
山田 「はぁ」
一樹 「ハァ……(とため息)、確かに」
一同、沈黙。……やがて、 (音楽8「綿貫さんのテーマ」:スタート)
綿貫 「……一樹のお父さんを追い込んでしまったのは、きっと私ね」
別府 「どういうことですか?」
綿貫 「一樹のお父さん、西川さんは、ここの地区の中で、長いこと履物を作って売るお店をしてこられたんです」
一樹 「え? 綿貫さん。うちのオヤジ、知ってるんすか?」
綿貫 「(うなずき)私が5年前に、この近くにショッピング・センターを建てたとき、その計画が、お父さんのような商売の方に大打撃を与えるのは、わかっていました。だから、そういう方にはテナントとして入っていただいて、これまでどおり仕事ができるように、便宜を図ったつもりでした。従業員も、できるかぎりここの地区から採用するようにしました。私は私なりに、そういうやり方で、この部落と部落の外の壁を壊したかったんです」
別府 「そうだったんですか」
綿貫 「でも、仕方ないことかも知れないけど、そういうやり方を嫌う人もいました。みなさんの経営が苦しいのも知っていましたから、それを救済するつもりで呼びかけたんですけど……、そういう私の態度が傲慢に見えたのね、お父さんには。じっさい傲慢だったのかも知れない……」
一樹 「それで、うちのオヤジは、どうしたんですか」
綿貫 「いくらに説得しても、お父さんは『店を続ける』って言い張って、ゆずらなかった。『玉砕してやる!』とまでおっしゃったわね。ずいぶん怒らせてしまって、申し訳ないことをしたわ」
一樹 「あいつが意固地でアホなだけです」
綿貫 「(首をふる)結局、私の店が、あなたのお父さんを追い詰めてしまったのよ」
一樹 「自業自得ですよ」
綿貫 「別府先生、私は私なりに聖書の言葉を心に抱いて、仕事をしてきたつもりなんです。私の心にあったのは、『ぶどう園の労働者のたとえ』なんです」
別府 「(うなずく)マタイによる福音書ですね。天の国のぶどう園には、12時や、3時や、5時にも労働者が雇われてくる」
綿貫 「私は自分がぶどう園の主人であるかのように思い上がっていたんです。『5時に来た労働者にも同じ待遇を』って。でも、憐れみをかけられた労働者は、本当は屈辱を感じていたのかも知れませんね」
別府 「でも、綿貫さんは、綿貫さんなりに良心に基づいて、お仕事をされたわけでしょう? 神さまはそれを知っておられるはずですよ」
綿貫 「神さまが赦してくださっても、自分で自分が赦せないような気持ちなんです」
また沈黙がやってくる……。 (音楽8:エンド)
沈黙を破り、浅居が口を開く。
浅居 「オヤジさん、行方、わからへんな……」
一樹 「(首をふる)わかるわけない。あのオッサンの行きそうなところ言うたら……」
一敏 「おう、一樹ぃ……!」 と上手から。 (音楽9:「救出」スタート)
一同、上手を振り返る。一升瓶を抱えた泥酔状態の一敏が、最初に礼拝に出席していた謎のサングラスの男に抱えられて現れる。
一樹 「オヤジ! おまえ、どこ行って――(と近づき)、ウアッ、くっせ! なんぼほど飲んでんねん」
別府 「西川さん、大丈夫ですか?」
一敏 「だい……だいじょうぶですぅ。わたしは西川一敏、お母ちゃんには逃げられ、息子にも逃げられ――」
一樹 「アホ、逃げたんはそっちやろ」
一敏 「家もなし、お金もなし、もうなんにも、ありまへん……」
山田が酒臭い匂いに耐えられず立ち上がったので、空いた椅子に男が一敏を座らせる。
浅居 「まぁしかし一樹、お父さん、化けて出てやる言うてはったけど、生きて帰ってきはってよかったやないか。(男に)あんた、どこでこの人を?」
男 「……公園で」
浅居 「公園で。酔っ払ってはったんか?」
男 「(うなずき)……じゃ」
浅居 「あ、ちょっと待ってーな」
別府 「すいません。あの、失礼ですけど、どちら様でしょうか」
男、立ち止まって振り返るが、何も言わない。
別府 「あ……あの、じゃあ、どうして、この人をここに連れて来ようと思ったんですか?」
しばし、沈黙のあと……。
男 「……ここが、教会だから」
別府 「え?」
男 「ここが教会だから、連れてきたんです」
別府 「……」
男 「じゃ」
別府 「あ……」
男、出て行ってしまう。
浅居 「ここが、教会だから、連れてきた……?」
山田 「どういうことですか? 公園で、酔っ払いが倒れてたら、ふつうは警察でしょう? どうして教会に連れてこないといけないんですか?」
一同、沈黙……。
山田 「酔っ払いを見つけるたびに教会に連れて来たら、教会はどうなってしまうんですか?」
別府 「山田さん。ちょっと待って。ご本人がおられるんですよ。一樹くんのお父さんが」
山田、うつむいてしまう。
浜野 「とりあえず、一樹が引き取るかどうかは別にして、酔いがさめるまでは、教会で休んでもらったほうがいいですよね」
別府 「そうだね。牧師館で休んでもらうのがいいかもしれない。運びましょうか」
浅居と別府が、一敏の肩を両側から担ぐ。
浅居 「こら一樹、おまえのおやっさんやろ。おまえ、担げ。別府先生、いいですいいです。一樹にやらしてください」
別府に変わって、いやいや一樹が担ぐ。そして一樹、一敏、浅居は下手へ。
一敏 「かずきーっ! どこやーっ! どこにあるんやーっ!」
一樹 「ここやって。もううるさいなぁ……」
浜野 「別府先生……あたしは、さっきの男の人が言ったこと、大事だと思います。教会が地域の中に立てられている限り、教会というのは、地域の人が困っているときにこそ、来れる場所であってほしいです」
別府 「……もともと、ここの教会は、そういう場所だったはずなんだけどね」
綿貫 「あの人は、きっと、この教会のことを知ってたから、一樹のお父さんを連れてきたんじゃないかしら」
浜野 「ここの教会だけじゃなくて、教会って本来そういう場所じゃないんですか?」
別府 「たしかに……でも、今この教会に来てもらったところで、いったい何ができるんだろう……」
一樹と浅居が下手から戻ってくる。
浅居 「やれやれ……。ほんで? どうしょうか?」
浜野 「一樹、あんたのお父さん、保証人になってもらってる人がたくさんいるって言うてたよね?」
浅居 「お、また何か考えてるな、浜野さん」
浜野 「(うなずく)一樹のお父さんを含めて、おたがい保証人でがんじがらめになっている人たちを全部ここに呼んできて、一緒に話し合ってもらったらどうかなって」
一樹 「ええー、まじか?!」
浜野 「たぶん、みんな同じように、あの借金取り……えーと名前なんて言ったっけ?」
山田 「栗岡さん」
一樹 「さん付けで呼ぶかよ」
浜野 「その栗岡ってのは、お父さんだけやなくて、他の人のところにも、取り付いてるんとちがうの?」
一樹 「ああー、いや、どうだろ」
一敏 「そのとおりやぁ!!」
と、突然下手から一敏がよろけそうになりながら、顔を出す。
一樹 「オヤジ……!」
浅居 「一樹! ほら!」
と身振りで示す。一樹、仕方なく父親を支えに行く。
一樹 「オヤジ、まだ酔いさめてないやろ」
一敏 「あの栗岡……! あいつ、このムラのつぶれかけの店を、次から次へと回って、食い物にしとるんや!! ……ああ、あかん、頭痛い……」
へたっとなる一敏。一樹、再び父親を引きずり下手へ。 (音楽9:F.O.)
(音楽10:「変革」スタート)
浜野 「そやから、お父さん一人だけやなくて、被害に遭ってるみんなが集まって対策を練らんとあかんのよ」
山田 「どうして? どうして、教会に呼ばなきゃいけないんですか? そういうことだったら解放会館を使ったらいいんじゃないんですか?」 (一樹、戻ってくる)
浜野 「そら解放会館でもええよ。でも、呼びかけはこの教会からやらんと」
山田 「でも、でも、そこまでやるのが教会のわざかどうか――」
浜野 「長いこと教会に来ている人と、その家族が困っているときに、教会が呼びかけて、みんなでどうしたらいいか相談しようって、呼びかけてもええやん! どうせ話し合うんなら、教会が場所を貸してあげてもええやん! それぐらいなら、お金がかかるわけと違うでしょう?! 教会ってのは、差別されたり、暮らしに困った人が来れる場所でないと、意味ないじゃないですか!」
浅居 「……だから?」
浜野 「だから、栗岡の被害者全員集めて、生活再建委員会作る! 教会を拠点にして」
一樹 「なんか、儲かってないおっちゃんおばちゃんばっかり教会に集まって、すごい景色になりそうやな」
浜野 「何言うてんの、一樹。あんたの生活再建も含めてやで」
一樹 「なんやて? なんでオレが入ってんねん」
浜野 「あんた、ほんまは差別が怖ぁて、就職活動せんかったんのと違うの? そやけど、そんなにいつまでもフラフラもしとられへんやろ? お父ちゃんらといっしょにちゃんと生活立て直さなあかん」
一樹 「なんか、めんどくさいな」
浜野 「何言うてんの、しっかりしいや」
浅居 「うむ、ええ話や、この際若いもんでしっかりやりや」
浜野 「しっかりやりや、やなくて、浅居さんは責任役員やねんから、別府先生といっしょに、被害者を回って呼びかけてくださいね」
浅居 「え?! わしも働くんかいな」
一樹 「当然でしょ。オレらを助けるために、しっかり頼んますよ」
浅居 「(鼻息荒く)……別府先生、さっきから黙ってるけど、いいんですか?」
別府 「お金をかけなくても……、できることから……、始めましょうか」
浜野 「お金をかけへんかったら、いいんでしょ? 山田さん」
山田 「わたしだって、困っている人を助けなくちゃいけないとは思ってるんです」
綿貫 「私も、なにか、できることをさせていただきたいわ。こうなった責任の一端は私にもありますから」
一樹 「綿貫さんは悪くないよ」
綿貫 「(首をふる)私はみなさんに謝る用意がある。それに、今でも私は、みなさんさえよければ、お店の場所を融通する話をすることもできると思う。もしそれで嫌われたとしても、生きるためにはどうすればいいのかって話したいの!」
別府 「綿貫さんが、そこまで迫ると、追い詰めてしまうことになるような気もします。まずは、皆さんの話を聴くところから始めた方がいいんじゃないでしょうか」
浅居 「まぁ、まずはヤミ金融をやっつけるところから始めんとあかんやろな」 (音楽10:F.O.)
(音楽11「決意」:F.I.)
浜野 「じゃあ、みなさん。いいですね? もう一度、意志確認をしますよ?」
一同 「……」
浜野 「一樹のお父さんを始めとして、この地区の生活再建のための委員会を作る。何ができるかわからへんけど、できることから始めるために、とにかくしんどい人に集まってもらう。そのために呼びかける。それを始めて、いいですね?」
別府 「でも、一樹くんのお父さんの意志を大事にしないといけない。私はこの話はいいと思うけれど、お父さんがどう思うか、聞いたほうがいいんじゃないだろうか」
一樹 「ああ、あいつは、嫌がると思いますよ。意固地やから」
綿貫 「私の顔を見たら、ますます嫌がるかも知れないわね」
浜野 「本人がその気がないから、やめるっていうんですか?」
別府 「いや、そうじゃなくて、(笑顔)たいへんだな、と思っただけさ。おそらくお父さんは何も話してくれないだろうからね。わたしが解放会館に話に行って協力を取り付けて、地区のヤミ金融の被害者を調査しようって呼びかけないといけないかな、と思っただけだよ」
浜野 「じゃあ、別府先生、やる気なんですね」
別府 「外に出るいい機会です。教会の中にこもっていたってダメだし、それに……」
浜野 「それに?」
別府 「浜野先生。いま目の前の人間を助けることもできないで情けないのは、わたしも同じなんです。わたしは、倒れている人を見捨てる祭司にはなりたくない」
浅居 「まぁ、これが、いかにもこの教会らしい方向かも知れんな」
山田 「はぁ……」
浅居 「山田さん、元気出しや。これも伝道なんやで、きっと。わし、今、そう思うわ」
山田 「伝道?」
浅居 「そうや。みんなでムラの中に出かけていって、『教会においで』って呼びかけて歩くんや」
山田 「確かに、それは、いいことですけど……」
浅居 「これもな、伝道なんやで、なぁ山田さん。ねぇ別府先生」
別府 「そうですね。では浅居さん、早速これからいっしょに解放会館に行きますか?」
浅居 「わかりました。善は急げやね」
別府 「じゃあ、私はいまから用意をしてきます。すぐ戻ってきますから」
別府、下手に去ってゆく。
綿貫 「私は、お父さんの様子をちょっと見てこようかしら。山田さん、ちょっと一緒に来てくれる?」
山田 「あ、はい」
綿貫と山田も下手に去ってゆく。 (音楽11:F.O.)
浅居 「一樹、よかったな」
一樹 「なにが?」
浅居 「なにが、て、おまえ、オヤジさんがホンマに死んでしもたら、どうするつもりやったんや」
一樹 「……」
浅居 「綿貫さんは、自分のせいでオヤジさんが死んだんや、と思うやろう。自分が追い詰めて殺したんやとまで思うかも知れん。おまえかって、一晩オヤジを泊めてやったら、こんなことにならんかったのに、と思うかも知れん」
一樹 「……」
浅居 「この教会は昔から部落問題に関わってきた教会やのに、たったひとりで苦しんでる人を死なしてしもたら、なんのために立ってる教会かわからん。教会が見殺しにしたようなもんやないか」
一樹 「……」
浅居 「そやから、生きてる間に人は大事にせなあかん、わかるか」
一樹 「……わかったよ。ま、オレは大事にされてへんけどな」
浅居 「また一樹、そういうことを言う……」 (音楽12「エンディング・テーマ」:スタート)
浜野 「一樹、あたしは、あんたに感謝してるで」
一樹 「なんやねん。さっき、『パン種、出て行け』言うてたのと、えらい違いやな」
浜野 「一樹は確かにパン種やけど、あたしかってパン種や。一樹のお父ちゃんもパン種や。パン種はふくらむ。教会の中をパン種でいっぱいにしたったらええのよ」
一樹 「イースト菌か?」
浜野 「そうそう、くっさーいな。イースト菌でパンパンにふくらんだ教会。そういう教会にしていかなあかんって思わせてくれたから、あたしはあんたに感謝してる」
一樹 「ふーん、じゃ、オレは教会員やないけども、教会のためになったわけや」
浜野 「だって、もう二度と、『教会なんてこんなもんや』なんて言葉、誰からも聞きたくないもん」
一樹 「しほり……」
浜野 「あたし、教会好きやもん。なかなかあたしがそう思ってるって、わかってくれへん人が多いけど」
一樹 「……いいや、オレはわかるで」
浜野 「あたし、今日の話をそのまま台本にするわ。それでパン種の話はできあがりやな」
一樹 「その劇の主役は、オレやな」
浜野 「なんで?」
一樹 「だって、オレはこの教会の最初のパン種なんやろ?」
浜野 「あー……、まぁそうやな。天の国は、一樹や、一樹のお父さんのような人の集まりやな」
一樹 「そこまで言われると、なんか、照れくさいな、ヘヘヘ」
浜野 「ハ、あほか。さ、台本書くで〜! 来週から本格的に練習や!」
山田と別府が戻ってくる。
別府 「お待たせしました。(浅居に)じゃあ、行きましょう」
浅居 「(行きかけるが)おおー! 思い出した〜!!」
一樹 「なにを」
浅居 「あの男の人や。おまえのオヤジさん抱えて来はった人」
一樹 「あーあ、あの、アーサー・ホーランドか?」
浅居 「誰やそれ?」
一樹 「知らんか? 似てると思うけどな」
浅居 「そんな人、知らん。そうやなくて、ほら、シンガー・ソング・ライターの、えーっと名前が出てこん。あっちこっちのローカルなお祭りとかドサまわりしてる……かわ……かわ……、カワカミ! カワカミや! カワカミぃ――」
一樹 「ジョー」
浅居 「それや!! ジョー・カワカミや」
一樹 「ジョー・カワカミってクリスチャンやったんか? 礼拝にも出とったけど」
別府 「ジョー・カワカミと言ったら、ここの前任者の、川上先生の息子さんじゃなかったかな?」
浅居 「ほんまかいな。だいぶフンイキ変わってたで。髪もあんな長くなかったし、ヒゲなんか生やしてへんかったで。だいいち母教会に帰ってくるのに、なんであんなにコソコソしてるんや?」
別府 「いろいろあったんでしょう。一時はキリスト教からも離れていたという話も、聴いたことがありますしね」
山田 「今度の秋祭りの野外ステージで歌うんですよ」
浅居 「なんであんたがそんなこと知ってるの」
山田 「(外を指差し)解放会館の掲示板にポスター貼ってましたから」
浅居 「ポスター貼ってあんの見たくらいやったら、なんで教会に来たときにわからへんのよ」
一樹 「浅居さんかて、わからんかったくせに」
浅居 「ああ、そらそうやな。しかし、まぁそれはいいとして、せっかく帰ってきはったんやったら、教会の劇にも出てほしいなぁ。なぁ浜野さん」
浜野 「あー、そうですねぇ! 今度の劇の中でも1曲歌ってもらいましょうか!」
一樹 「その前に、しほり、早よ台本仕上げなあかんのとちゃうの」
浜野 「だって、このやりとりを、そのまま台本にするんやから、それでええやん。そして劇の終わりに1曲、ジョー・カワカミにテーマ・ソングを歌ってもらうってのはどない?」 (音楽12:F.O.)
浅居 「おおーええねぇ、それ(笑)」
浅居&一樹 「あ、ワン、トゥ、スリー、フォー……!」
ギターの音が始まる。ジョー・カワカミと呼ばれた男、ギターを弾きながら登場。
(主題曲「あなたがたの手で」 by Rev.Jun Kawakami)
ヴォーカル:ジョー・カワカミ、コーラス:主演者全員
あなたがたの手で |
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(主題曲、終了)
全員一礼。その後、ギターのリズムが再開、出演者たちは音楽に合わせて行進しながら退場。
全員退場後、ジョー・カワカミも一礼して退場。
−完−