『人新世の「資本論」』斎藤幸平(集英社新書、2020、¥1,122-)

気候危機による人類の滅亡を回避し、人間の生き方を変える方法を提示する、刺激的な書です。

本書の主題のひとつは、気候変動による人類存続の危機です。しかし、その背後にある本当の原因は資本主義であるということを、丁寧にわかりやすく実例を上げながら解説してくれます。

資本主義を見直すと言うと、「あなたは共産主義者ですか?」とあざ笑われるのが関の山です。「ソ連の崩壊を知らないのか? 共産主義は間違っていたんだ」なんてことは、共産主義も資本主義もよくわかっていない子どもでも言います。それほど『資本主義こそが正しい社会のあり方だ」と洗脳されてしまっているのです。

しかし、資本主義が私たちを本当に幸福にしてくれているでしょうか。資本が莫大な利益を上げるために、労働者は激しい労働を搾取され、消費者はどんどん金を払わされる。労働時間は長くなり、賃金は減らされ、人生の大切な時間は奪われ、疲れ果てて働くことの意味も喜びも失われ、利益を得ているのは、一部の大企業の経営者と、その経営者たちから献金を受けている政治家だけ。資本主義が経済を発展させて、みんなが豊かになるというのは、嘘っぱちの夢だったのではないでしょうか。

本書は、資本主義は本当に人を幸せにはしていないのではないかという問題敵をしています。そして、資本主義こそが現在の気候危機の原因であり、資本主義を根本的に見直すことなしには、人類は滅亡するか、野蛮化する、つまり人々が暴力で奪い合う大混乱の状態になるしかないと警告します。

著者によれば、従来のマルクス主義者は、マルクスの初期の『資本論』にしか依拠しておらず、晩年の後期マルクスの研究を踏まえていないと主張します。そして、後期マルクスの研究を経て明らかになってくるのは、社会が人間に本当に必要な価値あるもの(農地となる土地や水など)を共同所有なもの(コモン)とし、市民運動、社会運動が国家を変えるプロセスです。

本書は、資本主義の対する問い直し、改革への動きは、既に世界のあちこちで始まっていると言います。それはあまりにも市民が資本によって搾取され、騙され、収奪され尽くす資本主義の問題点に気づいたからです。労働の搾取、貧富の格差の拡大、気候危機はすべてつながっている問題だと言います。

この社会矛盾と人類の危機を乗り越えるためのヒントが書かれている本です。たいへん刺激的で、私たちの目を覚まさせてくれる本だと思います。

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