
教会はいかにLGBTQを受け入れるのかを問う時代は終わり、クイアな人びとから何を学べるかを問う時代が来た。
原題は「Queer Lessons for Churches on the Straight and Narrow-What All Christians Can Learn from LGBTQ Lives」(ストレートで狭い道を行く教会〔異性愛者中心的な教会〕のためのクイア・レッスンー全てのクリスチャンがLGBTQの生き様から学べること:私訳)。
これまでの「LGBTQはキリスト教的に正しいのか」、「聖書はLGBTQについて何を語るのか」、「教会はLGBTQを受け入れられるか」といった問いの時代は終わり、今やLGBTQからストレートのクリスチャンが何を学べるのかということを問う時を迎えたことを感じさせます。
既存のキリスト教会は、人間関係を規定したり表現する上で、あまりにも異性愛者間の各家族的な婚姻関係を前提にし過ぎていました。しかし、クイアな人びとの生き方は、全ての人がもっと公平で対等な関係を土台にしたパートナーシップを結んでゆくことができる学びを提供してくれます。
また、クイアな人びとが歩んできた歴史は、初期キリスト教会の歩んだ道についての洞察も深めてくれるでしょう。そして、クイアな人びとが築いてきた助け合いの共同体のあり方は、今日の教会のあり方が本来どのような共同体であるべきなのかを教えてくれるでしょう。
キリスト教会がこれまでクイアな人びとにいかに暴力を振るってきたか。それも、意図的な暴力だけでなく、特に全く無意識的で日常的な「わずかな攻撃性」による言葉や態度のら暴力によってクイアな人びとを痛めつけてきたかに気づくことは、各々のクリスチャン自身が変わるために不可欠なことです。
この本には、キリスト教会が誰にとっても幸福な関係に根差す公正な共同体となるために、クイアからクリスチャンが学べることが順序立てて紹介され、解説されています。
著者は、アメリカの地位の安定した多数派の、その現状に安住するキリスト教会を主にターゲットにしてはいますが、日本ではクリスチャンは圧倒的に少数派であり、絶滅危惧種となっているにもかかわらず、それでも日本社会の多数派側に安住する姿勢を崩していないので、この本は日本のキリスト教会に対しても大いに当てはまる問題提起になっています。
クリスチャンひとりひとりの生き方と教会のあり方の両面から、根本的に問い直しを迫る本です。