『あなたは正しい 自分を助け大切な人の心を癒す「共感」の力』チョン・ヘシン著、飛鳥新社、2021(Kindle ¥1,758-)

毎日食べるごはんのように、いつも呼吸する酸素のように、こころ(感情、気持ち)に必要な「共感」を体得するためのケーススタディが満載です。

韓国の精神科医によって書かれた本で、精神医療ではなく、別のアプローチによる心の重荷からの解放を説く本です。

書名の「あなたは正しい」というのは、説得や論争の中で、正しいか間違っているかという範疇のことではありません。そうではなく、「あなたの苦悩や病は人生における難問や悲しみ、寂しさ、苦痛に晒された時の人間の正しい反応だ」ということです。たとえ言動が正しくなかったとしても、私の感情は常に「正しい」。だから、どんな人の感情も「忠助評判(忠告・助言・評価・判断)」=「(社会的・倫理的に)正しい言葉」で裁いてはならないのです。

私の心には、著者の「憂鬱というのは人生のベースカラーだ」という表現が非常に染み入ってきました。鬱状態というものは決して特別なものではなく、ましてや精神科医が簡単な問診票で診断できる鬱病などでもなく、多くが人生の困難における正常な反応なのです。

その正常な苦しみを癒すのが「共感」という手法です。それは相手と自分の両方より「ありのままの」「存在自体」「その存在の感情」にフォーカスしたもので、どんな人間なのかではなく、どんな感情でいるのかということを詳しく知ることを基礎にしています。

この「共感」は、特別な心理療法ではなく、家族や友人がその隣人に対して行うことのできる、「毎日食べるごはんのような」、そして毎日それがなければ死んでしまう酸素のようなものなのだと著者は言います。

そして、「共感」というものは、一方的に相手をただ肯定するだけではなく、自分自身の感情を省察することと不可分であり、より良き共感者となるためには自分を守ることも不可欠であることも説いています。共感とは相手と同じ感情になることではないからです。

この本はこういった「共感」を行う手法を数多くの事例を挙げながら丁寧に紹介してくれます。読んでいるうちに、読んでいる私自身が、これまでの人生、特にこども時代に経験した痛み、悲しみ、寂しさの多くを思い出し、自分の内面を俯瞰することになりました。また、欧米とは違い、儒教的な親子関係、上下関係の呪縛など、日本と共通点も多い文化的背景を前提とした本なので、紹介されているケースが理解しやすくも感じました。

読み進むうちに、自分の感情について気づこうという気持ちになり、自分にも他人にも優しくなれそうな気持ちになる本でした。この本はおすすめです。

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