『LGBTとキリスト教 20人のストーリー』平良愛香監修、日本キリスト教団出版局、2022

性とはいかに豊かに多様であるか。そしてそれをいかにキリスト教が打ち砕いてきたのか。さらに、いかに変わりうるのかを問いかけてくる。

20人のストーリーとあるが、コラムも含めるともっとたくさんの人びとが登場する。そして、「LGBT」のいう言葉でひとくくりにはできない、一人一人多種多様な性のあり方、生き方があることが示される。

多くの人が、いかに多くのキリスト教会の牧師、神父、信徒たちが自分たち性的少数者の人びとを拒絶し、裁き、絶望に叩き落としてきたかということを語る。そのために自らの命を絶とうとした人も1人や2人ではない。

しかし、この人たちは教会を追われながらも、それでも神を求め、イエスの愛を信じようとしてきた。あるいは、教会とは訣別することさえも神の御心だと受け止めてきた人もいる。

これまでは、教会が/クリスチャンがLGBT「を」どう受け入れられるか、という方向で語られることが多かったかと思う。しかし、この本の中には教会が/クリスチャンがLGBT「から」教わることがたくさん散りばめられている。

教会、牧師、信徒から迫害されながらも、それでも神は、イエスは私を愛しているはずだという信仰を捨てずに生きて来られた方々に感謝せずにはおれない。この人たちが、神に、そしてイエスに希望を託して生きている姿が問いかけてくるものは大きい。

加えて、この本は、読む人自身のセクシュアリティにも目を向けさせる。なぜなら本当は世界中の誰一人も厳密には同じセクシュアリティの人などいないからだ。

人間とはなんと多様な存在なのだろうと思わされる。そして、その多様性を神が我々を創造されたことの豊かさであると気づかせてくれる本でもある。

末尾に整理されている用語集もありがたい。セクシュアリティにまつわるさまざまな用語が懇切丁寧に解説してあり、学びに役立つ。

この本、是非手に取ってくださることをおすすめする。